植物用LEDについて
青色光+赤色光だけでは育成が遅かったり育成品質に影響する?
大光量の白色LEDだけでは育成品質がイマイチ?
近年、植物育成用ライトは技術の進歩のおかげで様々な光源が製造され、発売されています。
その代表格とも言えるのが、植物育成用LEDライトです。HPSランプに比べ消費電力が少ないため発熱が少なく、室内栽培における最大の問題点ともいえる熱の問題を解消してくれる新たな光源です。
10年ほど前に販売されていた植物育成用LEDは、赤と青の2色構成で、HPSランプに比べると目に見えて成長が遅く、正常に栽培することすらできず、補光程度の役割しか果たせない物がほとんどでした。
当時はLEDの光量もルーメン数を単位として表記されておりましたが、赤と青だけのLEDにおいては、どれほどルーメン数が高い物を選んでも成長に直接影響与えることはありませんでした。それは赤と青の2色だけでは光合成に必要な波長を網羅できていなかったからです!
そこで、植物育成において、新しく光量単位の基準の一つとなったのがPAR(光合成有効放射数)です。PARは光合成に有効な波長である380nm~710nm内の数値を指し、PAR値が高いほど植物の光合成を促進させるため、植物栽培用ライトの良さを測る重要な指数になっています。
ただ、近年の研究では、PAR値以外の不可視光帯の光にも植物を育てる上で需要な波長があることがわかってきました。
それはUVやFRです。もちろん光合成で使用される主たる色波長は青色、赤色ですが発芽段階から成長過程において、それだけでは不足であることがわかってきたのです。
UV光は植物の自然防衛機構を活性化させ、有害な光から身を護るための「日焼け止め」成分を作り出します。この成分は15種類ほどの防御タンパク質で構成されています。UV光が増加することで生成される防御タンパク質の量も増加します。これらタンパク質の存在は、植物の香り、色、味や耐病性を高めることができると言われています。
また、遠赤色光も種子発芽、花芽分化、開花、子葉の展開、クロロフィル合成、節間伸長などの植物の質的な変化を誘起する光反応において必要な色波長なのです。
つまり、光合成で使用されるの主たる吸収色波長は青色、赤色なのですが、それだけでは成長が遅かったり、成長品質が悪かったりするわけです。
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植物の葉が緑に見える理由と光合成に必要な色波長
光合成で吸収されない緑色の光だけを反射しているからです。
植物には、光を吸収して光合成をするための「葉緑体」という器官があり、その中に「クロロフィル(葉緑素)」という色素があります。その色素は、太陽光に含まれる赤色光と青色光を吸収し、残った緑色光は吸収されずに反射されます。
つまり、人間の目には、光合成で使われずに反射された緑が植物の色として見えているのです。
光に対する植物の基本反応(主に受容体について)
〇光合成
クロロフィルaが吸収できない光の色(波長)を吸収して、エネルギーをクロロフィルaに渡します。
クロロフィルaに限って言えば、青と赤の光が重要になります。
植物栽培用光源に最適なLED照明
植物工場で、植物栽培にふさわしい光源の選択はできる限り低いランニングコストで、植物が如何に効率よくエネルギーとして光を吸収するかがポイントです。
植物が育成に必要とする波長は主として可視光線ですが、光の色(波長)によって植物の成長に与える効果が異なります。
右図に単位エネルギー当たりの効果を相対的に示してみました。
植物は光合成(①)で成長しますが、それ以外に光形態形成(②~④)が重要な光反応です。
光形態形成とは種子発芽・花芽分化・開花・子葉の展開・葉緑素合成・節間伸長などの植物の質的な変化を指し、これには弱光反応(③、④)と強光反応(②)があり、フィトクロームという色素の働きを介して誘起されます。
また、強光下における葉緑素合成は青色光によって促進され、赤色光によって阻害される傾向があります。
以上をまとめると、光合成に対しては640~690nmの赤色光の効果がもっとも大きく、葉の正常な形態形成には420~470nmの青色光が必要とされます。
植物種や成長段階に応じて、赤色光と青色光の最適な割合(R/B比)があると考えられます。
LED光源が植物育成に向いている理由
植物育成工場の経費中で従来照明の場合、電力代と償却費20~30%を占める光源の選択は重要な位置を占めています。
また従来からよく使われている高圧ナトリウムランプなどの光源は赤色光と青色光のスペクトルバランスが悪く、多量の熱放射が空調負荷を大きくし、植物との距離を十分にとる必要があるために、施設が大型化する欠点があります。
前述に植物育成で光合成や形態形成には青色(420~470nm)と赤色(640~690nm)が必要なのですが、LEDの発光色は赤色(660nm)と青色(450nm近辺)は設計しやすく、ちょうど植物の葉緑素であるクロロフィルの吸収ピークにほぼ一致しているわけです。
LEDは白熱電球や蛍光灯や水銀灯等の放電発光光源と比較して、電力が第一にあげるメリットですが、特に対象の植物に近接させた場合でも対象物(植物)への照明による熱ダメージが少ないのも大切なメリットです。
空調全体の発熱量も少ないので、空調も制御しやすく、植物栽培用光源として最適な光源になります。
つまり、LED光源で設計すれば植物育成施設がコンパクトで低電力費用なシステムになります。
その他、従来の光源と比較すれば多くの虫の好む紫外線が格段に少なく害虫の影響を受けづらくもなります。